【基礎編②】適格簡易請求書 ~取引相手が不特定多数の者等であるときの簡易的なインボイス~

基本

インボイスの基本パターン

仕入税額控除の要件としてインボイスの保存が必要となります。

インボイスにはいくつかの基本パターンがあります。この基本パターンさえ押さえておけば後は組み合わせで対応ができます。

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適格請求書と適格簡易請求書の記載事項の違い

下の表のとおり、適格請求書と適格簡易請求書の記載事項は、ほぼ同じです。

異なる点は、適格簡易請求書は、

  • 交付相手先名の記載不要
  • 消費税額か、適用税率のどちらかを記載すれば良い
  • 一定期間をまとめて記載できない

の3点です。

あまり簡易ではないような気もしますが、適格簡易請求書であれば、交付を受ける側(買い手)は自分の名前が記載されていなくても大丈夫です。ただ、これはインボイス制度上の要件です。会社で経費精算するときは会社名を記載してもらうのが一般的なので、必要に応じて記載してもらいましょう。

また、適格簡易請求書を発行する側(売り手)の立場では、⑤消費税額を記載すると端数処理に対応しないといけないので、消費税率を記載する方が簡単でしょう。手書きの領収書なども税率だけ記載した方が楽ですね。

税率ごとに取引金額を記載するなど基本的なことは適格請求書と同じなので、適格請求書の記載事項をマスターしておけばOKです。請求書に限らない点も適格請求書と同じです。

適格請求書適格簡易請求書
適格請求書発行事業者の氏名又は名称及
び登録番号
適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
課税資産の譲渡等を行った年月日(一定期間)課税資産の譲渡等を行った年月日
課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額
税率ごとに区分した消費税額等税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率
書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

適格簡易請求書を発行できる要件とは?

誰でも自由に適格簡易請求書を発行できるわけではありません。

例えば、次の事業を行う場合は、適格簡易請求書を発行できます。ここのポイントは取引相手が不特定多数かどうかです。

不特定多数の要件なし不特定多数の要件あり
① 小売業
② 飲食店業
③ 写真業
④ 旅行業
⑤ タクシー業
⑥ 駐車場業
⑦ これらに類似する事業

「⑦これらに類似する事業」に該当するかどうかは、個々の事業の性質によって判断されます。国税庁のQ&Aでは、次のような事業は不特定多数の要件を満たすとされています。

  • 資産の譲渡等を行う者が資産の譲渡等を行う際に相手方の氏名又は名称等を確認せず、取引条件等をあらかじめ提示して相手方を問わず広く資産の譲渡等を行うことが常態である事業
  • 事業の性質上、事業者がその取引において、氏名等を確認するものであったとしても、相手方を問わず広く一般を対象に資産の譲渡等を行っている事業(取引の相手方について資産の譲渡等を行うごとに特定することを必要とし、取引の相手方ごとに個別に行われる取引であることが常態である事業を除きます。)

例えば、宅配便とかは、伝票に送り主の氏名を記載しますが、不特定多数の人との取引に該当するようです。コインパーキングは⑥駐車場業で不特定多数の人が利用するなら適格簡易請求書を発行できますが、月極で貸している場合はNGでしょう。

居酒屋で、常連さんや同業者の会合など、お客さんの顔と名前が一致する場合はどうかというと…、そもそも②飲食店業に不特定多数の要件はありませんので適格簡易請求書を発行できます。もし、飲食店業の傍らで不動産業もやっていたら…、⑥駐車業の売上なら適格簡易請求書を発行できますが、ビル賃貸の売上などはNGでしょう。

当然ですが、NGの場合は適格簡易請求書を発行できないだけなので、適格請求書を発行することになります。

小売業、飲食店業、写真業、旅行業、タクシー業、駐車場業の定義

適格簡易請求書を発行できる事業として、①小売業~⑥駐車場業が限定列挙されていますが、税法にはこれら事業の定義はありません。

日本標準産業分類(中分類)を参考にして判定してみてください。判定が微妙な場合は、お近くの税務署や専門家に確認するのが無難です。

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