インボイスのパターン
インボイスにはいくつかの基本パターンがあります。この基本パターンさえ押さえておけば後は組み合わせで対応ができるのですが、使いこなすためには、消費税の基本的な部分を理解しておくことが必要です。
インボイス制度を理解するために必要なこと
ズバリこの2点です。
- 課税資産の譲渡等
- 仕入税額控除
まずインボイス制度とは何か、簡単に述べたいと思います。
インボイス制度とは、「適格請求書等保存方式」のことで、消費税の仕入税額控除の要件として、適格請求書等の保存が必要という制度です。適格請求書登録事業者が課税資産の譲渡等を行ったときは、その相手先に対し、適格請求書等を交付する義務があります。適格請求書等に記載すべき事項は消費税法で定められています。
という感じでしょうか。
専門用語というものはとても便利です。多くの人がその単語一つで多くの情報を共有できるからです。消費税に詳しい方には専門用語を使ってインボイス制度のことを簡潔に説明することができますが、一般の方向けにはそうはいきません。
とはいえ、消費税の基本的な知識がないと、インボイス制度のことは何も理解できませんので、まずは、基本的な専門用語を出来るだけ分かりやすく説明したいと思います。
課税資産の譲渡等とは
課税資産の譲渡等とは、取引の売り手側の概念です。消費税の課税対象となる資産の譲渡、貸付、役務提供のことで、一般には「課税売上」と呼ばれます。
簡単に言うと、モノを売る、モノを貸す、サービス提供するといった商行為で、消費税が課される売上(収入)です。
厳密には専門的な判定が必要ですが、インボイス☆ノートでは触れません。普段の生活の中で感覚的になんとなく分かると思いますが、自信がない場合は税理士さんに相談したり、本で調べましょう。消費税の判定の本を一冊持っておくと何かと便利です。
仕入税額控除とは
法人や個人事業者などで一定規模の事業を行っていると、消費税の申告納付が必要となります。これを納税義務があるといいます。
「あれ?私もモノを買うときに消費税を払ってますけど?」と思いますね。それは消費者として消費税を負担しているのであって、納税義務があるわけではありません。
納税義務がある事業者は、1事業年度分の課税売上に係る消費税を集計して国に納めます。
ただし、事業者も、消費税が掛かる経費を支出していますね。これを課税仕入といいます。課税仕入とは、消費税が掛かる費用、支出のことで、課税資産の譲渡等の裏返しと思ってください。つまり、課税仕入かどうかを判定するときには、自分がその取引の売り手の立場なったと仮定したときに、課税売上になるかどうかで考えます。
- 課税売上:消費税が掛かる収益、収入
- 課税仕入:消費税が掛かる費用、支出
消費税の納税義務者は、「売り手」の立場で消費税を預かり、「買い手」の立場で消費税を支払っているのです。そして、その「預かった消費税(売上税額)」から「支払った消費税(仕入税額)」を差し引いた残りを国に「納税」します。計算式で表すと次のとおりです。
売上税額 - 仕入税額※ = 納税額
※厳密には課税売上割合などによる一定の調整が入ります。
この、「- 仕入税額」することを「仕入税額控除」といいます。
消費税の計算とインボイス制度の関係
インボイス制度とは、消費税の納税義務者が「取引先に支払った消費税(仕入税額)」を仕入税額控除(- 仕入税額)に含めるために、インボイスの保存が必要という制度です。
「取引先に支払った消費税(仕入税額)」が正しいものであるかどうか証明する書類がインボイスということです。
誰が証明するのか? それは売り手です。
インボイス制度は買い手側の仕入税額控除に関する制度なのですが、取引の裏表関係にある売り手側にも、正しい情報を買い手に通知する義務があります。
なお、取引先に消費税を支払っても、インボイスをもらい忘れたり、失くしてしまったり、インボイスだと思っていたら要件を満たさない書類だった、というときは、仕入税額控除が認められず、取引先に支払った消費税の分だけ、納税が増えますから、損することになるのです。
ちなみに、事業者は、給与や地代など消費税が課されない費用も支払います。このような費用は課税仕入ではありませんので、そもそも仕入税額控除をとれません。インボイスも不要ということです。