【基礎編③】適格返還請求書 ~値引、返品、割戻のときに交付するインボイス~

基本

インボイスの基本パターン

仕入税額控除の要件としてインボイスの保存が必要となります。

インボイスにはいくつかの基本パターンがあります。この基本パターンさえ押さえておけば後は組み合わせで対応ができます。

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適格返還請求書とは?

適格返還請求書は、マイナスのインボイスというイメージです。値引きや返品、リベートなどによって売上代金の全部または一部を返還する場合に、売り手は買い手に対し、適格返還請求書を交付する義務があります。また、適格請求書の記載金額の誤りを修正するときにも使用します。

インボイス制度独自の書類ですが、決まった様式や書類名はなく、一定の記載事項を満たしていれば適格返還請求書に該当します。ただし、交付義務が免除される取引もあります。

記載事項は次の6項目です。1枚の書類ではなく、複数書類の組み合わせで満たすこともできます。

 ① 発行者名と登録番号

 ② 返金する年月日と当初の取引年月日(一定期間をまとめることも可)

 ③ 当初の取引内容

 ④ 消費税率ごとの返還額

 ⑤ 返還額に対応する消費税額または消費税率

適格請求書の記載事項とは若干異なりますが、考え方は同じです。⑤は消費税額か消費税率のいずれかを記載すれば良いのですが、両方記載しても問題ありません。ちなみに、交付相手先名は適格返還請求書の記載事項になっていません。

単発の取引であれば、適格返還請求書を1枚交付するだけなので対応は簡単ですが、継続取引であれば、返還額を翌月の請求時にマイナス(相殺)することもあると思います。請求額と返還額を相殺する場合には、適格請求書と適格返還請求書の両方の記載事項を同時に満たさなければなりませんので、少し工夫が必要です。

請求額と返還額を相殺する場合

適格請求書と適格返還請求書を1つにまとめることもできます。両方の記載事項を合体させるだけなのですが、取引金額と消費税額(端数処理)の部分に特徴があります。

例えば、1つのインボイスの中で、「税込み請求金額1,100円(消費税率10%、消費税額100円)と、税込み返還額88円(消費税率10%、消費税額8円)」というように、別々に記載しても良いですし、

「税込み請求額1,012円(消費税率10%、消費税額92円)」というように、1,100円と88円を相殺した金額を適格請求書の取引金額及び消費税額の記載として取り扱うこともできます。発行者名など、適格請求書と適格返還請求書の各記載事項が重複するものもありますが、1つ記載されていればOKです。

注意点は、消費税額の端数処理です。請求額と返金額を別々に記載する場合は、それぞれの消費税額を計算するときに端数処理を行い、相殺する場合は相殺後の消費税額を計算するときに1度だけ端数処理を行います。

ちなみに、相殺するからといって、必ず1つのインボイスにまとめなければならないということはありません。適格請求書と適格返還請求書を別々に作成して、表紙などの別の書類に「今回請求額」や「今回返金額」のように相殺して記載することもできます。

適格返還請求書を交付しなくても良いケース

①値引き等のタイミング

適格返還請求書は、適格請求書を交付した後に、なんらかの事情で一部返金するようなときに作成しなければなりません。つまり、出精値引きや端数値引きのように、単に今回の請求金額をまけてあげる意味で値引きをする場合は、わざわざ適格返還請求書を作成する必要はありません。値引き後の金額が適格請求書の記載事項である「取引金額」として取り扱われます。

ちなみに、”消費税分だけ値引き”してもらうこともあります。本来税込み110円だけど、消費税分として10円をまけてくれるケースですが、これは、税込み10円の値引きを受けたと考えますので、支払う消費税が0円になったわけではありません。

②値引き等が少額のとき(1万円基準)

返還額が1万円未満であれば、適格返還請求書の交付義務は免除されます。1万円の判定は、返還や値引き等の対象となる請求や債権の単位ごとに判定します。

例えば、請求額110,000円から振込手数料880円を差し引かれて入金されたとき、売り手側では、差し引かれた振込手数料880円の”値引き”をしたとする考え方があります。このとき、差し引かれた振込手数料の分の適格返還請求書を交付しないといけませんが、一請求単位でみると880円の値引きなので、1万円基準により交付義務は免除されます。

また、今月分として110,000円の請求額から、前月分として1,000円×10件のリベートを差し引く場合、リベート1件あたりは1,000円ですが、一請求単位でみると10,000円の値引きなので、適格返還請求書の交付義務は免除されません。

③適格請求書の交付義務が免除されているとき

考えてみたら当然かも知れませんが、そもそも適格請求書の交付義務が免除されている取引の場合は、返金などを行っても適格返還請求書の交付義務はありません。

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